杉崇千波

キャラ評価:9/シナリオ評価:8

一言総評:なぜHシーンがあるのだろう。


 結局のところ、最初の出会いで発言がとんちんかんだったのはどういうわけなのでしょう。しかも二度目に会った時以降は全く普通に会話している(妙に礼儀正しいだけで、全く普通の範疇に入りますよね。その礼儀正しさがむしろ子供らしい微笑ましさを示しています)。

 さてストーリー。「一日に二つの貝殻を拾い、それを一年間休まず続けると願い事が叶う」。可愛い話です。
 話中にそのような描写はありませんが、彼女はおそらく学校(小学校なんでしょうかね?)が終わったあとに海岸に来て貝殻を探しているのでしょう。一年間一日の休みもなしに続けるとは、かなりの労力です。そんなことを毎日やっていて学校に友達はいるのだろうか、などと余計なことを考えてしまうのですが、まあなんだかんだで人なつっこい彼女のこと、きっと友達も彼女が貝殻を集めておまじないをしていることは知っているでしょう。夏の間なら手伝ってくれた友達もいただろうと思います。冬の海岸というのは想像以上に寒いので、冬になったら手伝ってくれなくなったとしても不思議な話ではありません。

 しかし疑問に思うのですが、彼女が願った「お父さんとお母さん」とは、実際に彼女を生み、育てた夫婦そのものを指すのではなく「お父さんとお母さん」という概念のことなのでしょうか。そうでなければエンディングが全く成り立たないのできっとそうなのでしょうが、どことなく納得いかないものを感じたのは私だけでしょうか。そして大学生の主人公に一人の少女を養える生活能力があるとは思えないのですが。
 しかしそんな危惧をあっさり飛び越えて、主人公は千波を引き取ります。そして千波を間に挟んで、結局くっつく相手は幼なじみの和泉、これはなかなか他では見ないストーリーです。最後まで千波との間に恋愛感情を持たせない、これだけで私はこのシナリオに8点以上をつけます(男女間に恋愛以外の関係があってもいいとは思いませんか?)。

 未来が明るいとは全く思えないのですが、彼らには頑張ってもらいたいものです。

アイコン

 ところでこの子のHシーン、私は見たことがありませんしこれから見るつもりも毛頭ありません。最初のプレイで何の疑問もなくこの子のHシーンを見た人間は、軽蔑していいとさえ思っています。

 なぜなら、話中道徳に全くそぐわない。彼女を抱きしめ、「もうそんなことはしなくていいんだ」と涙した主人公。しかし舌の根も乾かぬうちに彼女に“奉仕”させる。
「だって俺だって男だもん。男って弱いよなぁ」
 この状況下で押さえる程度の理性は、人間として持っていてくださいね。たとえ「奉仕させたい」と一瞬微かに思っても、それをみずから否定できる程度の理性は、人間として必要だと思うのですが。

 二度目以降のプレイで“CG回収”と割り切ってプレイするのは分かるんですけどね。私はそこまで割り切れませんが。

 誤解のないように言っておきますが、ここで問題にしているのは話中の道徳から考えておかしい、ということです。別に『悪夢』や『脅迫』のごときゲームを喜んでプレイする人を軽蔑する意図はないので、そのつもりで。

 それにしても、ここまで話をねじ曲げてでもHシーンを入れなくてはいけないとは、肌ゲー業界というのは想像以上に呪われた業界であるようです。

アイコン

 ところで、和泉シナリオとこのシナリオでは、楓という主人公の妹についての言及があります(葉月シナリオでも一応程度には触れられますが)。まだ主人公が幼い頃、病弱だった楓は死んでしまった。主人公はそれがあまりにも悲しくて悲しくて悲しくて悲しかったため、その深い悲しみから自分の心を守ろうと楓のことを忘れた。
 そう、ONEがどうのこうのと言う以前に、これではただの薄情者です。ONEやKanonでは「自分がその者を殺してしまった」という罪の意識がその者を忘れさせたのですが、このゲームの主人公にはそのような事実がありません。和泉が驚くのも無理はない。

 それにしても彼は、ONEをプレイしてどのような感想を持ったんでしょうね。すごく気になります。


評論メニューに戻るアイコン
トップに戻るアイコン