Innocent Eye's


*私は、この作品について他の評論などを一切読んでおりません。また、テキストについても記憶を頼りに書いております。プレイに支障のない程度ですがネタバレの部分もあります。あらかじめご了承下さい。なお、この文中に出てくる固有名詞は各社の登録商標です。

*概要
 主人公はある研究所で働く研究員。ある日事故が起きる。奥に閉じこめられている女の子と所長を捜しに、彼は地下へと潜っていく……。

 笛のヒビに絆創膏を使って、笛を演奏する。
 太陽の神殿、というゲームがありました。これはアステカ文明の遺跡を舞台にした謎解きアドベンチャーゲームです。サラダの国のトマト姫というゲームもそうでしたが、これは異様に難しい謎解きが有名で、平気で即死トラップが出てきます。
 イノセントアイズのような、持ち物を使って謎解きをしていくタイプのゲームは、実はパズルゲームだと思うのです。論理的な因果関係をもとに、持ち物を障害に使って解決する、という快楽が基本だと思います。そういう点においては、良かった点もあり悪かった点もあり。
 例えば水槽に水を入れる仕掛けは面白いと思います。ところが、シンセサイザーで扉をパスする仕掛けは、どうしてそれなのか、いまいち論理の意図が見えづらい。ゲームとしては他にそれっぽいのがないからその選択をしますが、どうしてそれになるのかの因果関係が見えない。これでは作り手に遊び手が遊ばれているような気になってしまう。
 謎解きとカギがあるのですが、そこに人が住んでいる気がしないのです。そこは研究所であって、インディ・ジョーンズが出入りしている遺跡ではありません。人は日常的に行き交っています。主人公はそこを出入りする権限がないから苦労してますが、そこで研究している人は、普通に行動しているはずです。それなのに、メモはともかくパスコードを魔鏡に隠したりはしないですよね。悪く取れば、ここの研究所の研究員は全員ルパンじゃないですか。

 推測ですが、システムの練りこみが甘いような気がします。こういう設定とこういう話を考えました。そしたら謎解きアドベンチャーがいいんじゃないかな。で、こういう仕掛けを付けたらいいんじゃないかな。こういうステップでゲームが作られているような気がします。つまり、ストーリーに対して、システムの必然性が感じられないのです。
 そこから感じられるこのゲームの欠点は、思いが先行していることにあると思います。つまり、ストーリーや設定に作り手は思い入れがあって、それ以外の部分は置き去りにされてしまっている感があります。憶測ですが。
 例えば、主人公を中心とした3人の女の子との関係も、何がなんだかわからない。僕はたぶん全部のイベントを見たと思うのですが、それでもなんだか置き去り感は拭えない。例えば美琴。父の愛に飢えていて、健気で……とくれば思い入れなければならないのでしょうか。そんなことはないはずです。主人公がどんなヤツか見えないせいもあって、彼女と
 紫音もそうです。外から隔離されていて、英才教育をされて……とくれば、ああいう性格になるのでしょうか。紫音の過去を知らないプレーヤーは、そうなってしまった彼女に同情はしても、彼女を生きたキャラクターとして見ることはできにくいのではないでしょうか。(いや、まあ、絶対にそうだと言うわけじゃないけど、要は謎解きに追われて、人間関係の描写が少ないんじゃないかと言いたいんです)
 地下に女の子が閉じこめられているからって、それを助けなければならないわけはないです。プレーヤーは他に選択肢がないからそうしますが。別にそこにいるから死の危険が迫っているわけでもない。むしろ大丈夫そう。ならば、どうして助けに行くのでしょう。それは明日の昼食をカツ丼にする程度の動機付けのようにしか感じられませんでした。だって救助隊が来るのを待っている方が賢明じゃないですか。
 まとめると、過分に設定とストーリーがあって、それがゲームの器に収まっていないため、想像力で補わせている部分が多すぎる気がします。システムとのミスマッチもありますが。
 とはいえ、この設定はなかなかにツボでした。それを考えると惜しくて惜しくて。さんざんけなしていますが、設定と話は良かったです。萌えでゲームをする人は、是非プレイをお勧めします。


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