少し辛い評価でしょうか。でも、『MOON.』『ONE』と出した人たちが独立して作った第一弾ゲーム、という触れ込みでなければこのゲームはプレイしなかっただろうと思います。ならば上記二作との比較で評価するのも決して理不尽なことではないのではないかと。そしてその二本との比較で見る限り、Kanonは9がいいところ、と考えます。ちなみに上記の二本に点数をつけるならば、私は確実に「11」をつけますね。
誤解のないように言っておきますが、このゲームは面白かったです。「エンターテイメントとして」面白かった。少なくとも、つまらない、プレイするのが苦痛なゲームならば6本のシナリオ全てをクリアしたりはしません。そこまで葩稍も暇じゃないです。ですが、上記二作との比較では明らかに質が落ちている、そう結論づけざるをえません。
まずこの6本のシナリオ、なぜ一つのゲームにしたのかが分からない。舞台が偶然一緒で、登場人物がところどころ重なっているだけの別の物語にしか見えない。一つの囲みの中に入れるからには、統一したテーマ、出来ることなら統一した「作者の言いたいこと」が欲しいところです。
ですが、このゲームはどうでしょう。詳しくはシナリオ別評価に譲りますが、何も言わない名雪・真琴シナリオ、“前に進む”栞、“過去を清算する”舞・あゆ・佐祐理。主張に一貫性が見えません。
「あっちのシナリオで主張したことと、このシナリオで主張していること。あれはあれ、これはこれだ。一貫性がなくて何がいけない?」
いけないに決まってます。それではどちらも中途半端にしか伝わりません。
「シナリオライターが二人いるから仕方ないと思います」
制作側の都合なんか知ったことか。
よろしい、ならばこの話の教条的な部分全てに目をつぶるとして、純粋にエンターテイメントとしてはどうでしょう。……こうなると、話は個人の好き嫌いのレベルに移りまして。そして葩稍あづさの個人的趣味を言わせてもらえるならば、こんなネガティブな、世の中は暗黒で包まれているという世界観によって描かれた話は嫌いです。『とらいあんぐるハート2』と比べてみるとよく分かる、Kanonは明らかにネガティブ指向の話です。
しかし、それでも評価は「プレイしてよかった」の9です。1999年に出たゲームの中で、葩稍のプレイした範囲では終末の過ごし方・とらハ2に継ぐナンバー3。
もう一度言います、何度でも言います。このゲームは面白かった。泣きました。だけど10点をつけるためには、足りないものが大きすぎるのです。